株式会社イード、ゼロ/1stパーティデータを活用したターゲティング広告の収益化を実現
〜広告代理店商流の広告収益におけるターゲティング広告の割合を50%まで向上〜
ビジネスゴール
ゼロ/1stパーティデータの広告マネタイズ
3rdパーティデータ廃止後も活用できる広告基盤づくり
課題
株式会社イードでは、20ジャンル60メディアを超える専門ニュースメディアを運営しており、その領域で深く尊敬されるメディア作りを行っています。各領域のコアなファンがサイトに集まり様々なコンテンツを消費しており、各サイトに訪れるユーザーの回遊性やエンゲージメントを高めるために、主にPIANO製品を活用して記事単体の分析、カテゴリ別/ライター別分析、またレコメンドウィジェットの導入等を行いPV数と回遊率、エンゲージメントを向上させることに成功しました。
しかしコアなユーザーのデータが集まりPV数・エンゲージメントを向上させたのにも関わらず、それらのデータを収益化するモデルが構築できていませんでした。そこで2017年からデータを活用した広告の収益化にフォーカスし、接触キーワード・カテゴリを活用したセグメントメニューの作成と「イードパブリッシャートレーディングデスク」、「運用型エディトリアルアド」、「イード・アクセスログリサーチ」の提供を開始しました。
単発での売上はあったものの、ストック売上になかなか結びつかず仮説と検証を繰り返すフェーズになりました。
導入における成果
Piano DMPの拡張機能を利用することで、会員データや読者アンケートを通じて得たゼロパーティおよび1stパーティデータを属性データを持たないユーザーにも予測拡張が可能となり広告商品化可能なターゲティング母数を満たせるデモグラフィックデータを持つことができました。それらを活用し、2018年から博報堂DYグループと共同で「カテゴリーワークスMobility」を提供しはじめ、合わせてセグメントメニューの構築とオンライン上でセグメントメニューと想定リーチ数を確認できる「IID Audience Platform」のリリースを行いました。
リリースから2年たった2020年には、2018年と比べて広告収益におけるターゲティング広告の割合が約5倍となりました。
お客様の声
Cookieデータの利用規制が進むことにより、いまあるデジタル広告の手法でのマネタイズが難しくなるという考えを持っていました。特に運用型広告におけるターゲティング精度低下による売上減少が目に見えている中で「面から人へ」の回帰は進む、その中で私たちのような専門メディアはビジネスのチャンス拡大期と捉え、IID Audience Platformの構築に取り掛かりました。新しいテクノロジーや手法に取り掛かってみたくなってしまうのですが、結局のところ私たちのような専門メディアはいかに「ユーザーインサイト」を可視化して、活用していくか、がマーケットに対してのバリューになると考えています。その中でPIANO様のツールはもちろん、ご担当者様に伴走をして頂き、国内外含めた事例の紹介等を含め私たちのビジネスをより加速する方法を提供してもらっています。
株式会社イード メディア事業本部 副本部長 森元行 様
メイン施策とその効果
読者アンケートから取得したゼロパーティデータを広告の収益化に活用
導入のポイント
サイト上のトラフィックデータを深堀り分析できるPiano Insight、サイト上での施策管理を行うPiano Composer、ユーザーセグメントの作成・管理を行うPiano DMPを2016年に導入しました。当時の目的としては、イードが持つ各メディア郡に来訪するユーザーのデータを自社データとしてきちんと溜め込み、更にサイトに訪れるユーザーの回遊性やエンゲージメントを高め、コンテンツ作成に対するアシストができればと導入しましたが、PV・回遊・エンゲージメントもアップしマネタイズのための準備は整いました。
分析部分ではセグメントを作成し活用していましたが、管理画面の使いやすさやセグメントの数値をリアルタイムに計算できることから、収益化のための効果検証がしやすいのではないかと考え、2017年から本格的にマネタイズ目的に活用し始めました。
施策のポイント
- 「カテゴリーワークス Mobility」の提供
博報堂DYグループの生活社DMPと連携し、各媒体のトラフィックデータやデモグラフィックデータをマーケティング活用する基盤を開発しました。自動車市場のトレンドや競合戦略を定量的に把握したうえでの精緻なマーケティング戦略立案から、戦略に沿ったコンテンツ制作やクリエイティブ開発、そして高精度なデジタル広告配信による自社サイトやディーラーへの効率的な送客が可能となります。試験導入時のデジタル広告配信では、リターゲティング配信と比べてもCPA(Cost per Aquisition: 顧客獲得単価)を約30%改善することに成功しました。
- IID Audience Platformの構築
自動車系ではメーカーごとの関心セグメント(例:トヨタ関心層)、教育系では子育て世代セグメント(例:中学受験すると想定されるユーザー)など、イード社でしか集められないデータをセグメント化し、バナー広告のターゲティング条件として販売し始めました。このターゲティングバナーは好調に売れましたが、手売りには限界があると感じ始め、ターゲティング条件と想定リーチ数を自動で表示し、更にはクライアントが購入・出稿できるような「IID Audience Platform」の構築をはじめました。現在は5段階フェーズ中の2段階目で、想定リーチ数とインタラクティブな検索機能を備えたUIの作成が完了していますが、将来的には外部のクライアントが自動で購入・出稿できるようなシステムを構築していきたいと考えています。
コロナ渦により特に出稿が増えたセグメント
GIGAスクール構想とコロナ渦の影響で、教育のオンライン化が推進されるなか、ICTデバイスやセキュリティサービス等を売り込みたい広告主から、教育関係者セグメントへの広告が増加
今後の展望
実際に広告がクリックされる割合や、広告意識調査の結果などを見ていると広告は見られない時代に来ており、更に拍車をかけるようにアドブロッカーのダウンロードが急増している状態で「広告」に対する消費者の目は非常に厳しくなっています。
従来の広告では出稿主からユーザーに一方的なメッセージを発信していましたが、今後は出稿主が伝えたいことと消費者の知りたいことがマッチするような広告配信を行っていかなければならないと感じています。メディアは最も消費者に近く、日々のコンテンツの反応から消費者の思考を肌感で得られるため、広告だけに依存しないようサブスクリプションや投げ銭、イベント等でユーザーを360度捉えられるようなビジネスモデルを構築していきたいと思っています。